1章
プロローグ
『ずーっと一緒にいようね』
そんな言葉を交わしたのは一体いつだったのか・・・。
それも思い出せないほど昔の口約束。
でも・・・
ずっと褪せずに心にあり続ける
自分にとっては世界でたった一つの・・・
「おきろ---------!!!」
「・・・んぁ?」
べし!!!!
がばりと音を立てて布団をひっぺがえされ、頭に平手打ちのおまけつき。
なんだよ!!
せっかく気持ちよく寝てたのに!!
「っっってぇぇぇ!!なにすんだよ聖也!!」
「いいかげんおきろっつってんだろ!」
ばし!!
「ばしばしばしばしたたくんじゃねぇ〜〜!!」
「じゃあさっさとおきろ!海斗!」
やっと夢の世界から戻ってきた俺は海斗。鈴森海斗。高校2年の17歳。
ごくごくふつーに勉強してきたおかげで頭は中の上。
ずっと野球やらサッカーやら色々やってきたから運動神経もそこそこだと思う。
今は結構有名な男子校に通っている。
そしてさっきからおれの頭をばしばしたたいてるこいつは上原聖也。おなじく17歳。
隣に住んでる幼馴染だ。
そしてお約束というかなんというか、俺といつも一緒に遊んでいたにもかかわらず頭も運動も常にトップクラス。
顔もいいときたもんだから当然モテル。モテまくる。
中学に入った頃から月に2〜3回の頻度で告白をされていたりする。
高校に入っても変わらずに。
それでもこいつは一度も受け入れたことがない。常にフリーでいるからまったくもって不思議だ。
女子の中にはそういうところがいいという奴もいるらしい。
人気は高まるばかりだ。
そして俺はそんなやつの隣にずっといたせいか、変な特技を見に付けてしまった。
まあ、それはおいおい説明するとして・・・
「やっべぇぇぇ!!!ちこくするぅうううううううううう!!!!」
時計を見たとたん叫びながら身を翻した俺の背中に、聖也の言葉がつきささった。
「だからさっきからおきろッつってんだろうがぁ!!!」
・・・・面目ない。
「・・・で、今日も遅刻の理由は海斗の寝坊・・・と。」
教室に入ってクラスメイトからかけられた最初の言葉がこれってどうなんだ。
ちなみにこのクラスメイトは神林徹。将来の夢は手品師らしい。
変わってはいるが結構いい奴だ。
「もっていうな。」
「事実だろ。」
事実でも言われるとくるんだよ。
心にグサッと。
・・・そう。結局あのあと間に合わずにしっかり遅刻をしてしまった。
おまけに玄関開けたとたん上から雪のかたまりが降ってきたせいで足止めを食らった。
ありえない。
あと一分あれば間に合ったのに!
それくらいおまけしてくれたっていいと思うね俺は。
いや、実際遅刻自体はもう慣れっこだからどうでもいいんだけど・・・
「しっかし上原はいつもいつも海斗のとばっちりうけてるよなぁ。わざわざ一緒に遅刻してこなくてもいいのに。」
そうなのである。俺が気にしてるのはそこだ。
聖也はいつも寝起きの悪い俺を起こしに来るせいで共に遅刻記録更新中だったりする。
現在の記録は1週間連続だ。
明日になればきっとそれも更新されるだろう。
「あ〜・・・。まじごめん聖也。なんでいつも起きれないんだろ・・・。」
「夜寝るのが遅いせいだろ。海斗の場合。」
「・・・・・・なんで知ってる。」
「何年の付き合いだと思ってんだよ。どうせゲームでもしてたんだろ。」
「・・・・・・。」
言い返せない自分が情けない。
ていうかそんなに自信満々に言い切れるお前もなんなんだ。
「かれこれ17年の付き合いだけど、俺は聖也がいまだによく分からない・・・」
「まだまだ修行が足りないとゆー事だな。」
なんの修行だよ。
「二人とも俺の存在忘れてない?まあいいけど・・・。それより知ってるか?あぁ、遅刻したから知ってるわけないよな。」
「・・・・・・分かってるくせにわざわざ言うなよ・・・。」
「明日、転校生が来るらしいぜ。」
俺のことは普通にスルーか。
・・・・・・・ん?
「転校生…・・・?」
もうすぐ年が明けるって言うこの時期に。
・・・しかも高校で転校生なんてめったにないってのに。
・・・・・・・転校生・・・か。
・・・なんだろう・・・・・・・。この感じ。
「どんなやつがくるんだろうな〜。」
徹は笑顔でそんなことを言っていたが、俺は嫌な予感がしていた。
胸の辺りがザワザワするような。
思わず眉をしかめた俺を見て、聖也がどんな顔をしていたのかも気付かないくらいに。
・・・そしてその予感は見事に的中してしまうのだけど。